コラムというか雑感というか、そんなノリで書いてみます。

※書いてみたら(いつものことながら)無駄に長くなりました。


コラムと言いつつ最初に図面が登場。

1

ちょっと前のリアル対局から、県代表の経験は数知れずという強豪さん相手の将棋です。
四間飛車対飯島流引き角の戦型で、序盤から中盤にかけて珍しく上手く指すことができ、有利というよりは優勢に近いはず、という感触で迎えた第1図。自分は持ち時間を使い切って30秒の秒読み、相手も残り数分くらいでした。

図は7三の桂を△6五桂と逃げたところですが、ほとんどの人は▲6五同銀△同歩▲3四桂という順が一目で見えると思います。以下△1二玉▲4二桂成△同銀(△6六歩もあるが▲4一成桂で先手良し)▲7七桂(第2図)。

2

最後の▲7七桂なんて気持ち良すぎますね。対局中はここまで見えていませんでしたが、何はともあれ▲6五同銀で桂を食いちぎって▲3四桂と打つ順はもちろん見えていました。そもそも▲3四桂の実現を第一目標に据えて中盤の指し手を組み立てていたくらいなので、喜んで▲6五同銀と指すのが常識ってものです。

ところが、第1図を前にして悪魔のささやきが聞こえてきました。

「確かに桂は欲しいけど、5四の銀と交換するのは微妙にもったいないんじゃないか?それよりもここで▲7七桂とぶつけるほうが遊び駒を活用して筋がいいはずだ」

秒読みの中、悪魔のささやきに抗いきれずに指してしまいました、▲7七桂。以下△同桂成▲同角△3四桂(第3図)。

3

▲7七桂△同桂成▲同角の瞬間、後手には▲3四桂を受けるための一手の猶予があります。そこで何か受けてきたら▲8六飛とぶつけて勝負、という予定でした・・・が、△3四桂がぴったりの受け。▲8六飛△同飛▲同角には△4六桂を見ています。

実は△4六桂まで進んでも▲7七角と戻っておけば先手指せる、というのがGPS先生の判断ですが、実戦はパニックのまま秒に追われて第3図で▲4五銀。すかさず△8七歩成とされて、数手前までの良さが嘘のような圧敗です。強豪相手に優勢まで持って行けた嬉しさよりも、終盤のねじり合いができないまま、強豪さんの真の強さを肌で感じる機会がないまま負けてしまったことの悔しさばかりが残りました。


前置きでだいぶ長くなりましたが、この将棋を指した後でちらっと考えたのが「最善だと思われる手(▲6五同銀)と、最善ではなさそうだが自分が一番指したい手(▲7七桂)のどちらを優先して選ぶべきなのか」ということでした。

何を言ってるんだ、最善手が見えているならそれを指すのが当然じゃないか、という意見はもちろんあるでしょう。その意見を真っ向から否定するつもりはありませんが、個人的には「自分が指したい手を自由に指せること」 が将棋のとても大きな醍醐味だと思っているので、「最善手こそが絶対」と割り切って考えるのは少し抵抗があるのです。

これは将棋観の問題と、将棋における目標の問題だと思います。
将棋観については、①研究者タイプ:盤上の真理追求、将棋の解明を重視②勝負師タイプ:勝敗を重視③芸術家タイプ:魅せることを重視、と分類した時(調べてみたらこの分類は谷川先生によるものらしいですね)、①が強い人は「最善手こそが絶対」となりそうです。自分なんかは③が一番強くて②も少々、①はほとんど興味なし、という状態なので、「自分が指したい手を指すんだい!」となってしまいます。

この3タイプのみを比較して、どれが正しいとかどれは間違ってると断じることはできないと思います。将棋に対する考え方、取り組み方なんて人それぞれでいいじゃん、という話です。ただ、「その人が将棋の目標をどこに置いているのか」という話が絡んでくると、3タイプの中である程度の正解と不正解は生じてくるような気がします。

「別に県代表とか全国優勝とか、そこまで強くなりたいとは思わない。楽しく将棋を指せればそれでいい」ということであれば、②や③重視で全く問題ないでしょう。あまり①ばかりにこだわろうとすると「楽しく将棋を指す」という目標が達成できなくなりそうです。逆に「県代表になる」とか「全国優勝を目指す」ということであれば、①を重視して最善手を追い求める姿勢は必要になってくるはずです。

自分はこれまでほとんど③と②だけを重視して、県代表クラスの何歩か手前くらいまでは来れたと思います(残りの数歩が途方もなく大変なわけですが><)。そうして「県代表クラスの棋力(最低でも24で2600点とか2700点とかでしょうか)になりたい」という気持ちが多少なりとも出てきた今、ここから先を目指そうとするなら①もある程度は重視することが絶対条件なのだろうな、という感触があります。よっしゃ先を目指すぞ、と固く決心したわけでは、まだ全然ないのですが。

そんなこんなで、長いこと持ち続けてきた将棋観が少し揺らいでるなー、という独り言でした。