予告通り、実戦で現れた歩の手筋特集です。

実は「歩の手筋をまとめる」という趣旨のものを書くのはこれが3回目になります。1回目はまとめサイトの初・中級車向け将棋講座で。2回目は、かつて書いていた個人ブログの中で「歩で遊ぼう」シリーズとして書いていました。いずれも部分図を使った教科書的な内容が中心だったので、実戦の中では具体的にそれらの手筋をどのように組み合わせて使っているのかを紹介し、中級~上級あたりの方に参考にしていただければ・・・というのが今回の目論見です。

で、最近24で指した自分の将棋を見返しながら題材になりそうなものを探していたのですが、悲しいほど地味な題材しか集まりませんでした。ダンスの歩で華麗に相手陣を崩壊させるとか(安倍さんが最近実戦の中で決めたそうで、羨ましい限りです)、歩をバックさせる手筋(参考)でカッコ良く受けるとか、そういうものを1つでも紹介したいと思っていたのですが、現実はそう甘くありませんでした。

自分の実戦で現れた歩の手筋のラインナップは、攻めなら叩きの歩垂れ歩、 受けなら控えの歩相手の大駒の利きを止める歩、くらいで大半を占めていました。本当に地味ですが、逆に言うとこの4つを実戦で使いこなせるようになるだけでも十分、ということにもなります。


 


●歩で形を乱す(1)


【第1図は▲3九玉まで】
後手:kame1223
後手の持駒:飛 桂 歩七 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
|v玉v角 ・v金 ・ ・ ・ ・v飛|二
|v香 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|三
|v歩v金v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・v歩v銀 銀 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂 歩 歩|六
| ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 歩 ・ 金 ・ 銀 ・ 香|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 玉 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:相手
先手の持駒:角 銀 歩 
手数=157  ▲3九玉  まで

後手番

第1図は相振りの終盤。美濃の急所である△3六桂の王手が入ってもうひと押しがあればという状況。斜め駒があれば一手詰めですが、飛車桂歩の持駒でどう寄せるかというところです。ここは大量の持ち歩を惜しみなく使っていきます。

第1図以下△2七歩▲同銀△5七歩▲5九金引△4八歩(第2図)

【第2図は△4八歩まで】
後手:kame1223
後手の持駒:飛 桂 歩四 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
|v玉v角 ・v金 ・ ・ ・ ・v飛|二
|v香 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|三
|v歩v金v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・v歩v銀 銀 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂 歩 歩|六
| ・ ・ ・ 歩v歩 歩 歩 銀 ・|七
| ・ ・ 歩 ・ ・v歩 ・ ・ 香|八
| 香 ・ ・ ・ 金 金 玉 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:相手
先手の持駒:角 銀 歩二 
手数=162  △4八歩  まで


第1図からは△2八歩も自然な手で厳しいですが、△2七歩と詰めろで垂らすのがより厳しい手になります。▲3六歩と取られた時に、△2八歩では取れるのが2九の桂、△2七歩なら△2八歩成から3八の銀を取れる、この差が大きいところです。本譜の▲2七同銀なら形が大きく乱れます。そして今度は叩きの△5七歩。▲同金ならさらに形が乱れるので、そこで△4八歩や△2八歩と打つ予定でした。実戦は▲5九金引だったので、△4八歩がさらに厳しく刺さりました。▲3八金なら△5八歩成や△8九飛が受け辛くなります。

第2図以下▲3六銀△4九歩成▲同金△8九飛▲5九歩△5八歩成▲同金△5七歩(第3図)

【第3図は△5七歩まで】
後手:kame1223
後手の持駒:金 桂 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
|v玉v角 ・v金 ・ ・ ・ ・v飛|二
|v香 ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・|三
|v歩v金v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・v歩v銀 銀 ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 歩 歩|六
| ・ ・ ・ 歩v歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ 歩 ・ 金 ・ ・ ・ 香|八
| 香v飛 ・ ・ 歩 ・ 玉 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:相手
先手の持駒:角 銀 桂 歩三 
手数=170  △5七歩  まで


▲5九歩と飛車の利きを止めた手に対する△5八歩成▲同金△5七歩がとどめの一撃。「ダンスの歩・ショートバージョン」とでも勝手に言っておきます。以下は受けが利かないので▲9六桂と攻め合ってきましたが、△5八歩成が詰めろになるので後手の攻め合い勝ちです。第1図からほとんど歩だけの攻めで寄せ切ったという例でした。

●歩で形を乱す(2)

【第4図は△1五香まで】
後手:相手
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ 龍 ・|一
| ・v銀v玉 ・v金 ・ ・v香 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v角 ・ ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・v香|五
| ・ 飛 ・ ・ 歩 ・ 歩 歩v銀|六
| 歩 ・ 桂 ・ 角 歩 銀 ・ ・|七
| ・ ・ ・ 金 ・ ・ 玉 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:kame1223
先手の持駒:桂 歩四 
手数=82  △1五香  まで


続いても相振りの将棋。中盤で偶然技がかかって相手の飛車を取り、優勢のまま迎えた終盤戦です。第4図、後手陣の急所と言えば、もちろん・・・。

第4図以下▲6四歩△同歩▲7六桂△5一金引▲6二歩△同玉▲6三歩△同玉▲8四歩(第5図)

【第5図は▲8四歩まで】
後手:相手
後手の持駒:歩四 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v金 ・ ・ 龍 ・|一
| ・v銀 ・ ・ ・ ・ ・v香 ・|二
|v歩v歩v歩v玉v歩v歩v角 ・ ・|三
| ・ 歩 ・v歩 ・v銀 ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・v香|五
| ・ 飛 桂 ・ 歩 ・ 歩 歩v銀|六
| 歩 ・ 桂 ・ 角 歩 銀 ・ ・|七
| ・ ・ ・ 金 ・ ・ 玉 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:kame1223
先手の持駒:歩 
手数=91  ▲8四歩  まで

後手番

▲6四歩は「考える前に手が伸びる」くらいの勢いで指したい急所の一着。金無双(△6二金上が入ってませんが同じようなもの)の一番の弱点であり、「壁の反対側から攻める」の理論にも当てはまる厳しい攻めです。△6四同歩には「桂は控えて打て」の▲7六桂、△5一金引にはすぐに▲6四桂とはせず、▲6二歩とあくまでも歩で攻めを繋ぎます。▲6二歩に△同金左なら▲6三歩△同金▲6五歩△同歩▲6四歩の要領で拠点を作れば良しです。

本譜の△6二同玉にも▲6三歩△同玉と吊り上げ、 第5図の▲8四歩が決め手。△8四同歩▲同飛と進めば8二の銀取りと▲6四飛を見た十字飛車です。

第5図以下△7二金▲3二竜△5二金▲6五歩△同歩▲8三歩成△同銀▲6四歩(第6図)まで先手勝ち。

【第6図は▲6四歩まで】
後手:相手
後手の持駒:歩六 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|一
| ・ ・v金 ・v金 ・ 龍v香 ・|二
|v歩v銀v歩v玉v歩v歩v角 ・ ・|三
| ・ ・ ・ 歩 ・v銀 ・ ・ ・|四
| ・ ・ 歩v歩 ・ ・ ・ ・v香|五
| ・ 飛 桂 ・ 歩 ・ 歩 歩v銀|六
| 歩 ・ 桂 ・ 角 歩 銀 ・ ・|七
| ・ ・ ・ 金 ・ ・ 玉 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 ・|九
+---------------------------+
先手:kame1223
先手の持駒:なし
手数=99  ▲6四歩  まで

後手番

第6図で後手投了。以下は△5四玉なら▲5二竜で一手一手、△6二玉なら▲8三飛成△同金に▲6三銀△7一玉▲7二銀成から詰みがあります。

●当たりを強くするための叩き

【第7図は△3四香まで】
後手:相手
後手の持駒:銀 桂 香 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・v香|一
| ・v歩 ・ ・ ・v金v玉 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・v香|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩v香v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ 歩v桂 桂 ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ 馬 ・ ・ 歩 銀|六
| 歩 ・ ・ 歩 ・ 金 銀 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ 玉 ・|八
|v龍 ・ ・ ・vと ・ 金 ・ ・|九
+---------------------------+
先手:kame1223
先手の持駒:桂 歩六 
手数=138  △3四香  まで


続いては対抗形。急戦の出だしから定跡を外れた形になり、玉頭方面でのねじり合いが続いて迎えた第7図。△3四香と打たれ、次に無条件で△3五香を許すといっぺんに負けになるので、この瞬間にどこまで迫れるかという状況です。

第7図以下▲4三歩△同金寄▲同桂成△同金▲3三歩△同金▲3五歩△同香▲3四歩(第8図)

【第8図は3四歩まで】
後手:相手
後手の持駒:銀 桂二 香 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・ ・v香|一
| ・v歩 ・ ・ ・ ・v玉 ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v金 ・v香|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 歩v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ 歩v桂v香 ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ 馬 ・ ・ 歩 銀|六
| 歩 ・ ・ 歩 ・ 金 銀 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ 玉 ・|八
|v龍 ・ ・ ・vと ・ 金 ・ ・|九
+---------------------------+
先手:kame1223
先手の持駒:金 桂 歩二 
手数=147  ▲3四歩  まで

後手番

第7図から▲4三歩と叩けるのが非常に大きく、対して△4一金や△5二金には▲3三角成△同玉▲2三金の詰みがあります。
金を取ったあとは3筋に歩をひたすら叩いて叩いて叩きます。 第8図の▲3四歩には2つの意味があって、(1)金を上ずらせて守備力を下げるのと同時に(2)△3四同金に▲3六歩~▲3五歩と取った手が金取りになるようにしている意味もあります。一手争いの終盤では特に、このような当たりを強くするテクニックによって先手を取る(手番を握る)ことが勝敗に直結してくるのです。

余談ですが、当たりを強くするテクニックといえば96年の竜王戦第2局で谷川先生が指した絶妙手△7七桂(参考図)が有名どころですね。これは7七の地点に先手の駒を呼び込むことで、△7六歩と銀を取る手をさらに厳しくしようという意味です。

【参考図は△7七桂まで】
後手:谷川
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・v飛 ・v銀v金v玉 ・|二
|v香 ・v銀 馬 ・ ・v金 ・ ・|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ 歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩v歩 ・ 銀v歩 ・v歩 ・|五
| 歩 ・ 銀 ・ 金 ・ 歩 歩 歩|六
| ・ 歩v桂 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|七
| ・ 玉 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 飛v角 ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手:羽生
先手の持駒:桂 歩三 
手数=80  △7七桂  まで


第8図以下△3七香成▲同金△3四金▲3六香△3五歩▲同香△同金▲3三金△2一玉▲4五馬(第9図)

【第9図は▲4五馬まで】
後手:相手
後手の持駒:銀二 桂二 香二 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ 角 ・ ・v玉v香|一
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・ ・v銀 ・ ・ 金 ・v香|三
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ 歩 馬v金 ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 銀|六
| 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ 金 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ 玉 ・|八
|v龍 ・ ・ ・vと ・ 金 ・ ・|九
+---------------------------+
先手:kame1223
先手の持駒:桂二 歩三 
手数=157  ▲4五馬  まで

後手番

前述の通り、第8図の▲3四歩に△同金ならそこで▲3六歩があるので、後手は△3七香成を決めてから▲3四金と手を戻しました。これには▲3六香から金をさらに吊り上げて▲3三金と押さえ、第9図の▲4五馬が決め手。△4五同歩の瞬間は自玉がほぼ完全なゼットになり、▲4二角成から詰めろの連続で寄せ切ることができました。


● 歩で相手の大駒を抑え込む

【第10図は△8二角まで】
後手:相手
後手の持駒:桂 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・ ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・v角 ・ ・ ・ ・v銀v玉 ・|二
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ ・ と ・ ・v香v歩|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・v香 ・|五
| ・ 歩 ・ ・ 銀 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 銀 歩 ・|七
| ・ ・v龍 ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八
|v龍 ・ ・ ・ 金 金 桂 桂 香|九
+---------------------------+
先手:kame1223
先手の持駒:角 歩二 
手数=98  △8二角  まで


ラストは、プロの将棋では全く見かけなくなりましたが24ではちょくちょく遭遇する飯島流引き角の将棋。第10図は後手が4六の角を8二に逃げたところです。先手陣の要塞は、中盤で形勢を悲観して(実際はいい勝負だったようですが)ひたすら粘りまくった結果の産物です。その分だけ攻撃力は乏しいので、5四のと金の活用がカギになります。

第10図以下▲6四歩△5三歩▲4三と△同銀▲9六角△7一竜▲7三歩(第11図)

【第11図は▲7三歩まで】
後手:相手
後手の持駒:桂 歩三 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・v龍 ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・v角 ・ ・ ・ ・ ・v玉 ・|二
| ・ ・ 歩 ・v歩v銀v歩v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・v香v歩|四
| ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・v香 ・|五
| 角 歩 ・ ・ 銀 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ 銀 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八
|v龍 ・ ・ ・ 金 金 桂 桂 香|九
+---------------------------+
先手:kame1223
先手の持駒:歩 
手数=105  ▲7三歩  まで

後手番

まずは「相手の大駒の利きを歩で止める」▲6四歩で8二の角を無力化しながら、2枚目のと金作りを目指します。対して△6六桂のように攻め合いを目指されても自信は持てなかったのですが、先手陣の分厚い金銀の壁を相手にする気は起きない、というのが後手目線だと自然な感覚でしょうか。「急所の駒にアタック」の△5三歩はこちらにとって悩ましい手です。

秒読みに追われる中、決断の▲4三と。 続く▲9六角△7一竜の局面で二の矢がなければ切れ模様になり、先手の堅陣がそのまま姿焼きになるという悲しい結末が待っていますが、直前に発見した第11図の▲7三歩が抜群の味でした。直接手の▲7二歩よりも、次に厳しい狙い(▲7二歩成△同竜▲4一角成)のある▲7三歩のほうがずっと厳しい攻めになります。

▲7三歩の一手は、(1) 相手の大駒2枚の利きをいっぺんに止める「焦点の歩」、(2)次に▲7二歩成を狙う「垂れ歩」、(3)△7三同角と取れば▲6三歩成が角取りになる「当たりを強くするための歩」、という3つの側面があります。

実際には△7三同角▲6三歩成△3七角成と勝負されてどうだったかな、というところではありますが、本譜は第11図から△4二金▲6三歩成と進み、二枚の大駒を完全に抑え込むことに成功しました。最後は▲7二歩成から2枚のと金を寄せていって勝ち。第11図の▲7三歩が流れを変える一手になったと思います。


●最後に

冒頭でも書きましたが、歩の手筋特集とは言ってもほとんどは叩くか垂らすかの二択という非常に地味な内容でした。その分だけ「なんだ、歩の手筋って思ったほど難しくないじゃん」と思っていただけたのなら幸いです。

それでもまだ自信がないという方には、深く考えなくてもいいから、とりあえず叩くか垂らすかしてみようぜ!と言いたいと思います。 難しく考える必要は本当に全くなくて、「(よほどの初心者なら別ですが)相手は普通、最善の形を目指して駒組みをしている」→「最善の状態になっている相手陣の駒を少しでも移動させれば、最善の状態は崩れる」→「多かれ少なかれ、自分にとっては確実にプラスにはなる」という理屈です。

金銀の連結を崩して浮き駒を作るとか、駒を上ずらせるとか、そういうのはほぼ確実にプラスになるし、その後の攻めも組み立てやすくなります。「その後の攻め」まで見越した上で歩を叩くのがもちろん理想ではありますが、特に秒読みなどの状況では「後のことはわからないけど、とりあえず叩いて形を乱しておく」というのは実戦的なテクニックとして非常に有効です。後のことは叩いてから考えても良いのです。

そして歩の手筋を使うための大前提となるのが歩を打てる筋を増やしておく(=盤上の歩を突き捨てておく)ことです。場合によっては突き捨てずに歩を残すことで相手陣を圧迫したり、攻めの拠点になったり・・・というケースもありますが、初めのうちはとにかく「迷ったらとりあえず突き捨てておけ」くらいの気持ちでも良いと思います。せっかく駒台に歩がたくさん載っても、打てる場所がないのでは歩切れと同じようなもので非常にもったいないのです。・・・ただし、もちろん守りの歩(囲いの一部になっている歩)は突き捨て厳禁ですので要注意。



毎回「短くスマートにまとめたい」と思いはするのですが結局長文になってしまうのが定跡手順になりつつあります。ここまで読んでくださった方がいましたら感謝致します。