「研究しておきたい形」の中の一つがエルモ囲いでした。エルモ囲いそのものが嫌というよりは、仕掛けの部分への対応も含めて悩ましい、というところです。

【第1図は△7五歩まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・v金 ・v金v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v銀v玉v角 ・|二
| ・ ・v桂v歩 ・v歩 ・v歩 ・|三
|v歩v飛 ・v銀v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩v歩 ・ ・ 歩 ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 角 銀 金 ・ ・ 歩 ・|七
| 香 ・ 飛 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| ・ 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=37  ▲4五歩  まで

後手番

エルモ囲いからシンプルな斜め棒銀で仕掛ける手段もあるようですが、24だと第1図のような△7三桂△8四飛型からの仕掛けが比較的多い印象です。振り飛車側の▲5七金型は将来△7六歩▲同銀~▲5九角のような展開の時に6六の地点を守っている意味があります。そして▲4五歩とここの位を取っておくのが個人的なエルモ対策の急所。

舟囲いとエルモ囲いを比較した時、エルモ囲いの最大の売りはやはり「横からの攻めに強い」ことでしょう。そのかわり、舟囲いよりも薄くなりやすいのが玉のコビンでもある4筋。なので極力▲4五歩の一手は入れておいて、終盤は▲4四歩で勝負。うまくいけば2枚の一段金を無力化できる。そんなビジョンです。

考え方としてまるで的外れということはないはず・・・という自信はあるのですが、実際に左辺が互角の捌き合いになって狙い通りに▲4四歩が実現しても、厳しいんだか厳しくないんだか微妙な感じだったりします。極端な話、▲4三歩の叩きを手抜かれても▲4二歩成△同金右の形がまだまだ堅いわけで、妙に耐久力があるんですね。

そんなこんなで手を焼きつつも研究はサボっていたところ、ちょうど今月号の「将棋世界」にエルモ囲いの特集が組まれていて、付録にも三間対エルモ囲いの攻防がとりあげられていました。やったね。

【第2図は△7二飛まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・v金v桂v香|一
| ・ ・v飛 ・ ・v銀v玉v角 ・|二
|v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・v銀v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 金 銀 歩 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 角 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=30  △7二飛  まで


付録から。この場合の正解手順は▲7五歩△同銀▲7六歩なんだそうです。以下△6四銀に▲2六歩から悠々と銀冠への組み替えを目指すのがなるほどという手順。左辺では多少屈服しても、第二次駒組みに入ることでエルモ囲いのもう一つの弱点「進展性のなさ」が露呈する、という仕掛けです。

【第3図は△7四飛まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・ ・ ・v金v銀v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v玉v角 ・|二
| ・ ・v桂v歩 ・v歩 ・v歩 ・|三
|v歩 ・v飛v銀v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 歩 歩|六
| 歩 歩 ・ 銀 金 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 角 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=34  △7四飛  まで


同じ付録から、第3図はエルモ囲いではありませんが、△7三桂△8四飛型の斜め棒銀の変化。ここでも▲7五歩△同銀▲7六歩△6四銀▲2七銀・・・と銀冠を目指す手順が書かれています。この場合は居飛車側も穴熊を目指す含みがありますが、その場合は4筋の歩を突いていないのを活かして▲4六金から玉頭方面で動いていくようです。

縦の将棋を目指す、という自分の発想は間違っていなかったわけですが、具体的な手段としてこういう指し方もあるのか、という驚きがありました。ただ、第2図や第3図からの▲7五歩△同銀▲7六歩という手順への抵抗感が半端ないのがネックでもあります・・・。「棒銀は五段目に出させてはいけない」、そして「自分の飛車先に歩を打つのは重すぎる」、この2つの考え方が体に染みついているせいです。

将棋世界(本体)に載っているプロの実戦例を見ると普通にこういう手順を踏んでいるようなので、自分の考え方が古すぎるのかもしれません。「銀冠大好きっ子」としては銀冠に組める魅力も相当なものなので、試してみたい気持ちもあります。