10日過ぎましたが明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。



ところで、何の前触れもなく、昔を振り返って懐かしみたい気分に襲われることがあります。実家に帰省している時だと、母校の前や通学路だった道を通ってみたり、小さい頃のアルバムを見返したり・・・。将棋に関しても、昔指した将棋を並べ返して懐かしむことが時々あります。将棋以外のことは物忘れが激しいのに、将棋だけは10年以上前に指した一局を鮮明に覚えていたりもするのが不思議です。

そんな中でも特に印象深い一局があって、今回はそれを紹介させていただこうと思います。
対局が行われたのは2004年8月、地元の某市で行われた将棋大会のBクラス(初・二段)の決勝戦です。 自分は当時二段で、その大会のBクラスで優勝すれば三段になれるという規定だったので気合いが入っていました。

その決勝戦の将棋が強く印象に残っている理由その一が、「暑さにやられて体調が最悪だった」というもの。 準決勝の途中あたりから徐々に意識が朦朧とし始め、冷たい缶コーヒーを飲んだりしながらなんとか準決勝は勝ちきれたのですが、ほぼ限界だったのでしばらく隣の部屋で休ませてもらっていました(もう一方の準決勝はまだ始まったばかりだった)。運営の方が冷たい濡れタオルを用意してくださって、決勝戦はそのタオルを額に当てながら指すという有様でした。さすがにこのような状況は、これまでの将棋人生の中でもこの時一回だけです。

もう一方の準決勝を勝ち上がってきたのは、当時同じ道場に通っていた同い年の女の子(当時初段)でした。もちろん何局も指してお互いの手の内は知っていたので微妙にやり辛さがあったし、女の子がBクラスの決勝戦まで勝ち上がるというのは(当時としては)かなり異例のことで周囲の雰囲気も少し違うなと感じていたし、こちらの体調は最悪だったし、自分にとってはとにかく異様な状況の中での決勝戦でした。この一局が強く印象に残っている理由の半分は、こうした舞台背景によるものだと思います。

・・・だいぶ前置きが長くなったので、そろそろ将棋のほうも紹介せねば。 

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自分の先手番で、▲四間飛車vs△5三銀左急戦と、お互いにいつも通りの戦型選択。ここから居飛車側の仕掛けは①棒銀②斜め棒銀③△6五歩早仕掛け、の3つが代表的ですが、後手は違う作戦をとってきました。

第1図から△7二飛▲7八飛△6四歩▲3六歩△6五歩▲同歩△7七角成▲同桂△8二飛▲8八飛△7九角(第2図)

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△7二飛▲7八飛の交換を入れてから6筋を攻めるのが居飛車側の工夫です。この仕掛けは当時、同じ道場に通っていた子どもたちの間でかなり流行っていて、今でも24で指しているとたまーに遭遇する形です。第2図は居飛車が成功しているようにも見えますが定跡形でまだいい勝負。第2図から▲8九飛△4六角成▲3七角△同馬▲同銀△4四歩▲6六角・・・と進んでいきました。

▲3七角△同馬に対する取り返し方は、当時は「▲同桂は桂の頭を狙われやすいから、形は乱れるけど▲同銀と取るほうが手堅い」と教わっていたので銀で取っていました。今は桂で取ることにしています。
▲3七同桂の場合、△6六歩▲同銀△7八角▲8八飛△5六角成▲5七金(変化1図)で馬が捕まるという変化手順があります。

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▲3七同銀の形なら▲5七金に△4五馬と逃げられてしまうので、▲3七同銀△6六歩には▲7八銀と辛抱する形になります。当時はその形ばかり指していたので、本譜は▲6六角と先着できて一安心という心境でした。

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少し進んで第3図。ここでの次の一手が、「強く印象に残っている一局」の中で「最も印象に残っている一手」です。今見ると▲7七桂と打って次に▲8五桂を狙うのが自然だと思うのですが、実戦はものすごい手を指しました。ちなみに、この将棋は後に地元の新聞の将棋欄に載って、次の一手は「攻めを繋げる素朴な手」と評されています。自分の感覚だと「素朴な手」というより「ゴツい手」という感じでしょうか。


第3図から▲9五桂!△1二香!▲8三歩成△8一飛▲7二と△1一飛▲6二と△同銀▲8三桂成・・・と進みます。▲9五桂は我ながら(良くも悪くも)凄い手だと思いますが、対する△1二香もなかなか凄い手です。8筋を明け渡すかわりに△1一飛と転回して盤面右側で勝負しようという意図ですが、この後8九の飛車を後手陣に成り込むことができ優勢を意識しました。

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第4図は終盤、△4八成桂と金を取ったところ。ここからの収束の手順もすごく印象に残っています。
2分で読みきったら24初段くらい・・・でしょうか。










第4図以下▲4二銀成△同金▲2二金△4三玉▲3二銀△同金▲同竜△5三玉▲4四角△6三玉▲6二竜(第5図)まで、先手勝ち。

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金を取って▲2二金までは一目だと思いますが、そこで△3三玉なら▲4四角と捨てて詰むことに気付けるかどうかがポイントです。本譜の△4三玉にも最後に▲4四角が決まって詰みとなりました。

こうして三段昇段を果たし、それから早くも十年の月日が経とうとしているわけですが・・・機会があれば四段免状取得にも挑戦してみたいと思っている今日この頃です。

 
他の方々にも思い出の一局(一曲でもいいかもw)があれば是非紹介していただきたいです!