今日は自戦記と講座の中間を意識した内容で更新したいと思います。数日前の安倍の実戦からです。

序盤の形を研究することはプロにおいても重要なテーマであり、素人も素人なりにじっくり考えるという機会にもなります。一方、終盤の形を知ることも、確実に勝率アップに繋がります。今日は終盤の形を想像しながら寄せるという例を紹介してみます。

今日は終盤がテーマなので中盤までは簡単に。ポイントは48手目あたりだったでしょうか。

2013-11-13a

△4五桂を▲同桂と取っては△同竜と活用されてしまうので、竜の行方を伺ったところです。竜取りを無視する手や竜を引く手、単に取る手などありますが、本譜は少しでも中央にと△2六竜。ただし本譜を見ると1筋へ利かせてせめて△同竜と取っていれば、まだまだ難解だったでしょう。以下4筋をこじ開けて角を活用できるようになり、そこから手順に飛車も打ち込んだことで、徐々に良くなったと思います。

2013-11-13b

今日のメイン、基本図はこの局面。駒の損得はほぼありませんが、玉が固く駒の効率も良い先手が良しです。2筋あたりから金を打ち込んでじっくり駒得を計る順もありそうなところですが、ある狙いを持って▲3二馬から▲3三竜と清算し、▲6一角と決めに行きました。

2013-11-13c

後手は金気があればまだ粘りも効きますが7筋を受ける形自体が難しく、また▲5二角成と金を取られるとジリ貧になりそうです。そこで△5一金と引いて攻めを切らしに行くのも仕方ないところ。金2枚なら簡単な即詰みですが金銀を打ち込み詰めろを掛けます。▲8一銀不成に対する逃げ道を用意する△9四歩に、▲8一金と取ったのが狙いの一手です。(△9四歩のところ、△8四歩なら即詰みがあります。調べてみてください。)

2013-11-13d

▲8一金は詰めろではなく、角をタダで取られてしまうため、一見すると不安になる手です。しかしここで▲8五桂と打つと有名な必至の形になることに気付けば、自信を持って指せる手です。(▲9三桂成と▲9一銀成が同時に受かりません。)この形が見えたため、基本図からの▲3二馬が決断できたのです。形を知らなければ、実戦の中でここまで読みを掘り下げることは難しかったと思います。(もっとも、この局面では自玉に危険が全く無いので一旦▲4三角成などとしても勝てるかもしれませんが…。)

形を知ることで読みを省略でき、それが決め手になった例として紹介しました。


先手:安倍
後手:某初段

▲7六歩    △3四歩    ▲2六歩    △4四歩    ▲4八銀    △3三角
▲5六歩    △4二銀    ▲6八玉    △4三銀    ▲7八玉    △2二飛
▲3六歩    △3二金    ▲5八金右  △6二玉    ▲7七角    △7二玉
▲8八玉    △5四歩    ▲6六歩    △4二角    ▲4六歩    △3三桂
▲4七銀    △1四歩    ▲1六歩    △2一飛    ▲9八香    △1二香
▲9九玉    △2四歩    ▲3七桂    △1一飛    ▲1八飛    △1五歩
▲同 歩    △同 香    ▲同 飛    △同 飛    ▲同 香    △1九飛
▲6八金寄  △1五飛成  ▲4五歩    △同 桂    ▲1六歩    △2六龍
▲4五桂    △同 歩    ▲6五歩    △5三角    ▲1二飛    △4四香
▲5五歩    △同 歩    ▲6四歩    △同 角    ▲6七香    △4二角
▲5五角    △3三角    ▲8八銀    △1一歩    ▲1三飛成  △5四歩
▲7七角    △6二銀    ▲6四歩    △同 歩    ▲8六角    △5五桂
▲5六桂    △4七桂成  ▲6四桂    △8二玉    ▲5三歩    △6三歩
▲5二歩成  △同 銀    ▲同桂成    △同 金    ▲4一銀    △4三銀
▲3二銀成  △同 銀    ▲3一角成  △4三銀打  ▲3二馬    △同 銀
▲3三龍    △同 銀    ▲6一角    △5一金    ▲7二金    △9二玉
▲8二銀    △9四歩    ▲8一金    △6一金    ▲8五桂    △3九角
▲9一銀成
まで103手で先手の勝ち